第一章

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    山南に昨日の事件の書類や資料を渡し、藤堂の手伝いをしていた櫻島は、山南の机で広げられている『呪絵師』という単語が目に入った。同じく見ていたであろう藤堂が、先日から起きている事件の書類を見ながら呟いた。 「入れ替わるように割れた鍔の事件が舞い込んできましたよねー」 藤堂の何気ない一言で山南動きが静止した。 「言われてみれば…」 「関連性とかあるんでしょうか?」 「少なくともある気がします。三木さんはどう思いますか?」 「文献などに載っているかはわかりませんが、関連性で考えると呪いの類である可能性あると思います」 二人は頷く。 櫻島は、突然自分に話が振られ内心動揺を隠せず冷や汗を流したが、うまく立ち回ったと考えながら汗を拭いた。 『山南さん失礼しまーす』 神妙な空気の中、戸の外で沖田の呑気な声が聞こえた。沖田が入室するとすぐに櫻島に気付き、犬の如く駆け寄って抱き着いた。 「総司、お前何やってんの?」 「感動の再会」 「お二人とも、いつの間にかそんなに仲が良くなったのですね」 「いえ、山南さん。決してそのようなことはございません」 山南と藤堂は慣れているのか、突然の沖田の訪問でも構わず、自分の持ち場に戻ろうとしていた。 いや、助けてよ。と思いながら引っ付く沖田を剥がそうとすると、突然沖田の動きが止まった。 気になり沖田へ目配せすると、櫻島の首筋を凝視する沖田が見えた。あ…察し。と身構えていると、山南が助け舟を寄越してくれた。 「総司。三木さんも嫌がっているじゃないか。離しなさい。何か報告があって来たんじゃないのかい?」 「あ、そうでした」 あっさり拘束を解かれたため倒れそうになり、山南の側に居たはずの藤堂に支えられた。 構わず沖田は懐からとある紙切れを取り出し、机の上に置いた。 「「「祭り案内?」」」 「そう。この案内が来たんです。せっかくだから行きません?縁日」 「総司、遊びに行ってる場合じゃないよ。忙しいんだから」 「でも、この祭りに最近来た巫女さんもお給仕するって、この案内くれた方から聞きましたよ」 「ぜひとも行きましょう!!!!!」 巫女が来るとわかるや否や、櫻島は素早く手を挙げて主張した。横で山南が苦笑を浮かべていようが構わなかった。 .
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