第一章

13/15
前へ
/17ページ
次へ
「で、三木さん、あんた総司の保護者として行くのか?縁日に」 「永倉先生も一緒に行きませんか?」 「そうだなぁ…土方さん次第かな」 昼。櫻島は稽古後に井戸で汗を拭いている永倉に、祭りの案内を見せて縁日の誘いをした。 縁日に行くかどうか渋っているようだが、きっと永倉は祭り嫌いじゃない。そう考えていた櫻島は、後一声と思い口を開くも、声を荒げながら駆けつけて来る沖田に遮られてしまった。 「保護者!?私は子供じゃないんです!でも、三木さんが家族になるならそれは嬉しいですけど…ごにょごにょ」 「おーう、相変わらずの地獄耳だな」 櫻島は沖田を睨みながら言った。 「あの、論点変えないでいただけますか?で、永倉先生、ここが大事!噂の巫女さんが奉仕するそうなんです!」 「お!?本当か!」 永倉の顔が笑顔に変わった。これで勝ち確定と己の拳を強く握り、永倉の笑顔以上の笑顔で櫻島は答えた。 「はい。なので先生、ぜひ土方副長殿の許可を得、その後私にお声掛けください。せっかくなので一緒に楽しみましょう」 「おう。早速夕刻に土方さんに相談してみるよ。じゃ、次巡回だからまた後でな」 そう言って永倉が隊士たちに解散の号令をかけて部屋へ戻った。櫻島は沖田に目配せをし、懐から取り出した包みを沖田に渡した。沖田は包みを開けて、中にある金平糖をひとつまみ口に放り込んだ。 「次は斎藤君か…って、食うなよ」 「一君は来るのでしょうか」 「だから賄賂(これ)がいるんでしょうが。これだから青二才は」 「あのね櫻島さん。青二才は禁句ですよ。次言ったら襲いますからね」 「はいはい。吾輩は土方殿を説得するから、君は斎藤君を上手に説得してくださいね。隊長殿」 では。と手を振って沖田と別れた。そしてその足で台所へ向かい、副長を説得するための道具として茶と沢庵を用意して副長部屋へ向かった。 何故こんなにも切羽詰まって櫻島達は説得や祭りの誘いをするのか。 それは、沖田が祭りの案内を持ってきた朝の出来事がきっかけであった。 .
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加