第一章

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「何でだ?」 「行きたいからですよ」 「誰と行くんだよ」 「山南さんと藤堂君と一番隊組長と永倉先生と斎藤殿」 「意外な面子だな」 面子に関して特に気にしないのか、平然とした様子で落ちた沢庵を拾って口に運んだ。何個か沢庵を口に運んでお茶を飲んだ後、「行っていいぞ」と許可を下した。 「意外とあっさりなのだな」 「いい顔しておいた方が落としやすいだろ」 「ほう。確かに許可は得ましたぞ。男に二言はないからな?あ、あと後ほど買い出しで外に出る」 「はいはい。ほら行けよ」 土方が手を仰いで追い出すような仕草を出したので、櫻島は盆を下げて部屋を出た。 夕刻。各々山南の出した条件をこなした櫻島達は、隊士部屋の前で集まった。 「進捗報告!」 「一君を賄賂で釣り、稽古に励みました!」 「よし!藤堂さんは」 「女中さんの手伝いである掃除洗濯は完了しました!」 「よし!私は鬼の副長の説得に成功し、庭掃除をしたので、残り四つです。あとは外の買い出しと晩酌で終わりですね」 沖田がそっと手を挙げた。 「この後巡回があります」 「わかりました。そうしたら、私と藤堂さんで買い出しに参りましょう」 「御意」 藤堂が頷いた。櫻島は山南から預かった財布を藤堂に渡し、その足で屯所を出た。 山南の注文は、消耗品、甘味、酒。先に甘味を購入しなければ店が閉まってしまうため、櫻島達は山南の行きつけである甘味処へ行き、団子を数本購入した。 次に消耗品である半紙と墨を問屋で購入し、最後に酒屋へ向かったが、道中誰かが喧嘩をしている声が聞こえたのに気付いた藤堂が、櫻島の肩を軽く叩いて引き止めた。 「三木さん。何か怪しくないですか?」 「喧嘩ですね…少し様子を見て見ますか」 二人は木の陰に隠れて、怒声のする方へ耳を傾けた。すると言い合いが激化し、いよいよ刀を抜く音が聞こえた頃には仲裁のために飛び出し、藤堂が叫んだ。 「あなた方はここで何をしている!刀を抜くのはやめなさい!」 いきなり飛び出してきたため、櫻島側にいる侍が反射的に刀を下ろした。 櫻島は片足を後ろに動かして横に向いて刀を避け、手刀で侍の後ろ首を打って気絶させた。 .
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