第一章

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屯所から出て二条城を過ぎた頃、迷いもなく先を歩く山南の後ろ姿を見つめて櫻島は考えた。 城田彰人の幻影術を以ってしても、見破れる者もいる。 ならば桂小五郎が平然と京の町を歩くことができるだろうかーー 「まぁ、そう易々と見つかる方じゃないんですけどねー」 「ん?何か言ったかい?」 「いえ、なんでもございませんよ山南さん」 山南の隣へ駆けつけ横顔を一目すると、山南の顔は笑顔だった。 「ところで山南さん、ご友人の居場所に心当たりが?」 「なんとなくね。彼には恋人がいてね、そこにいる気がするんだ」 「なるほど」 前回は意図せず鉢合わせをしたが、今回は新撰組総長が意図して長州人と会う。 もしこのことが副長の耳に入ったらどうなるか。 確かに桂達と近々会うことは予定内だったが、総長を利用する形で会うことを考えたのは軽率だったかもしれない。 もう少し時期を見て行動するべきだったのだろう。 そうとも知らず、甘味処に寄って手土産を購入する山南の顔は先程と違って笑顔なのだから、これはこれでよかったのかもしれないが。 鴨川付近に差し掛かり、とある小物屋から見知った人物が出て来るところを見掛けた。 「やはり、この付近でしたね」 「お見事」 流石あの桂小五郎の友人を務めるだけある。 桂と恋人の幾松も山南に気付き、桂は軽く手を上げて手招きをした。 恋人と堂々と町に出ているとは、城田の術を過信しすぎているなと櫻島は考えながら溜息を吐いた。 「やあ山南君。こんなところで出会うとは」 「貴方に会えると思いましてね。ですが、お忙しそうなので後日改めますよ」 「いや、大丈夫だ。私も君に話があってね。幾松はこの後仕事だから夕刻にいかがかね?近くで」 「よろこんで」 桂は櫻島と目が合うと、片目を瞑って視線を山南に戻した。 こうして夕刻に桂との約束を取り付け、二人は桂達と別れた。 .
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