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「そろそろ時間かな」
「そうですね。ごちそうさまです山南さん」
桂との約束の時刻に近付いたため、近くの水茶屋で時間を潰していた櫻島と山南は荷物を整え店を出た。
「おや、何か向こうで賑わってますね」
山南が鴨川の辺りで人集りができていると指差した。
気になった二人は鴨川へ向かい、人集りの最後尾にいる一人に声を掛けた。
「すみません、この集まり一体何でしょうか?」
「いやあお侍はん、鴨川で仏さんが上がったらしいんや」
二人は顔を見合わせた。
「三木さん、二条城にあります奉行所への通報お願いします。私は現場を確かめます」
「かしこまりました」
櫻島は急いで奉行所へ向かった。山南は人集りをかき分けて身を乗り出して状況を目視した。
「こ…これは」
そこには女性の惨殺死体と心中したであろう男性の死体があった。
目視した時点で今しがた起きた出来事であることは明白であり、山南と櫻島が水茶屋にいた時に事は起きたようだ。
「(恋慕絡みか、諍いか…。どちらにせよ、人が行き交う時間に起こるとは手を掛けたであろうこの男性が半狂乱になって殺害したと…ーーおや?)」
山南は、男性の死体の傍に割れた鍔が落ちていることに気付いた。
最近起きた事件でも割れた鍔が発見されたと報告を受けていたため、偶然にしては不可解であると考えた。
暫くして、櫻島が奉行所の役人を連れて戻ってきた。
「山南さん、ここは私が引き受けますので、一度桂殿にお声掛けした方がよろしいかもしれません」
「あー…そうだね。悪いけど、すぐに戻るから任せるよ」
「おまかせください」
山南はそう言ってその場から離れた。
道中、山南は櫻島の言葉に引っかかりを覚え一度立ち止まった。
『山南さん、ここは私が引き受けますので、一度桂殿にお声掛けした方がよろしいかもしれません』
ーー"桂殿"?
「(なぜ三木さんは桂さんの事を知ってるんだ…?)」
山南は振り返り、鴨川を見た。
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