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中嶋さんが小学生の時の話。彼女は小学校が終わり、自宅近くの児童館にて友人たちと遊びに興じていた。児童館の隣にある公園で体を動かしたり、児童館の中での読書やボードゲームと言った具合である。
中嶋さんの家は両親が共働きで夜遅く、早くとも八時か九時になるまで家に帰ってこない、それ故に中嶋さんの姉弟は学校が終わってすぐに家には帰らずに児童館で時間を潰すことが習慣になっていた。
中嶋さんと弟の貴文くんはとても仲の良い姉弟だった。六年生の中嶋さんは一年生の貴文くんの世話を日頃から積極的に行っていたのだった。
ある日の夕方、中嶋さんの姉弟は友人たちと共に児童館の中で「怖い話」が好きな少年の話に聞き入っていた。今回の話は「夕方に出てくる妖怪」であった。口裂け女、怪人赤マント、人面犬などの話を聞いて皆震え上がる。
そうしている内に、黄色い日差しの差し込んでいた窓硝子はオレンジ色の光が差し込むようになり紅硝子となり、逢魔が時が来たことを児童館の中にいる小学生たちに告げていた。その向こう側には児童館の塀があり、その上には夕焼けの光に照らされたカラスが紅く見え、紅烏の姿となり カァーカァー と、これまた逢魔が時が来たことを告げているのだった。
もう夕方か。児童館の中にいた小学生達がポツポツと帰りだす。中嶋さんと一緒に「怖い話」を聞いていた小学生達も続々帰り支度のためにランドセルを背負い始めた。中嶋さんの姉弟だけはランドセルを背負わずに、リバーシを始めようと、白と黒の石を両方に中央に乗せ始めていた。
「あれ? 帰らないの?」と、中嶋さんの親友の女子が尋ねた。中嶋さんは弟の貴文くんと先行を決めるジャンケンをしながらその問いに答えた。
「うち、お父さんもお母さんも夜遅いから…… 今の時間帰っても何もないし」
皆が帰っても中嶋さんの姉弟だけは最後まで児童館に残っていた。明るかったオレンジ色の夕焼けもすっかり深まり赤黒い血の赤のような夕焼けと姿を変えていた。
二人は五回戦目に入っていたリバーシを切り上げて帰り支度を始めた。
それから二人は児童館を後にする。
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