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その日以降、貴文くんは行方知れずとなってしまった…… 警察や町内会や全国から集まったボランティアが連日不眠不休の捜索を続けるも、終ぞ貴文くんが見つかることはない。
毎日が梨の礫である。
中嶋さんは唯一の手がかりとして「見慣れない少年」のことを貴文くんの友人達に尋ねたのだが、誰一人としてこのような少年の存在は知らないとのことだった。
「ねぇねぇ、夕方ぐらいに知らない内に紛れ込んでる子のことって知ってる?」と、クラスの同級生などに聞いても梨の礫。存在そのものが無いかのような扱いとなっていた。
中嶋さんは勿論警察に話し、警察も「誘拐」の可能性を考慮し、謎の少年の件を聞き込みに回ったのだが、終ぞその存在を確認することが出来なかった……
それから数週間の間、貴文くんの捜索が行われたのだが、梨の礫の日々を前に打ち切りとなってしまった。両親もいつ帰ってきても良いようにと食事に貴文くんの分を作るぐらいしかやることがなくなり、半ば諦め始めていた。
諦めていないのは中嶋さんのみ、学校が終わると児童館にも行かずに貴文くんを探す生活を繰り返すようになっていた。姉として大好きな弟を探したいと言う思い一筋からである。
そんな毎日の中、それを見かねた中嶋さんの友人は彼女を強引に児童館に連れて行き一緒に遊ぶことにした。しかし、中嶋さんは一緒に遊んでくれるものの虚ろな目をした糸の切れた人形の状態、楽しそうに遊んでいる風ではなかった。
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