夕方の神社

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「おいおい、今言ったでしょ? 七つまでは神のうちって。七歳までは人は誰でも神様のものなんだ。だから神様が取り返しに来ても文句は言えないの。その『取り返し』って言うのは死んじゃうことなんだけどね。昔は病院もなかったし、今ほどいっぱい食べることもできなかったから、子どもが七歳まで生きることはとってもとっても喜ばれることだったんだ。多分だけど七歳まで生きることが出来なかった悲しみを癒やすために当時の人が考えた迷信だったんだと思うよ。七つまでは神のうちって。でも…… 本当だったとしたら」 「神様って願いを叶えてくれるいい人なんじゃないの!?」と、少女が頬を膨らませつつ少年に向かって叫んだ。 それを見た少年は神妙な顔をしながら首を振った。 「それは人間の勝手な思い込みだよ。神って漢字の通り、申し示すものであって、人の願いを叶えるためのものじゃない。良い神様だっているし、悪い神様だっている。いや、神様に良い悪いなんて無いのかもしれない。『取り返し』だって善悪とかこういう問題じゃなく行われるものだから文句の一つも言えないんだ」 「やだなぁ…… そういうの」 「これを『神隠し』って言うんだ。昔は子どもがこんな風に消えることがよくあったらしいよ…… そうそう、お祖父ちゃんから聞いたんだけど、消えた子どもは神様の元に帰って、子どものまま神様になるんだって。そして、逢魔が時になると人間界に降りてきて、気に入った自分と同じ七歳までの子どもを『神様の元に取り返して』友達にするんだってさ」 まだ六歳の小学一年生達は絶句し震え上がり、友人と手を繋ぎ恐怖を和らげる。それ以上の年齢、つまり七歳を超えた子ども達は安堵しホッと胸を撫で下ろした。
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