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ハートワーク
俺は交通事故で死んだ。まだ高校三年生だった。バイトして貯めた金で念願のバイクの免許を取得、中古のバイクを買って乗り回していた。楽しくて楽しくて、バイクに乗れるだけで他は何もいらないと思っていた。
目の前に子猫が飛び出して、俺は子猫をかわそうとして・・・
気がついたら、もう死んでいた。
役所のような建物の椅子に腰かけていた。
自分の整理番号が掲示板に表示され窓口へ行く。若い女性の係員が爽やかな笑顔で話しかけてくれた。
「№4971 お名前は竹本テツさんで間違いございませんか?」
「はい」
「あなたの場合、生前、特に悪いことをした訳ではございませんが、親より先に死んだことにより親不孝の罪で50ポイントの減点が発生し、天国へ直行することはできません。」
「はい」
「従いまして、もう一度、現世に戻り、50ポイント獲得することができましたら天国へ行くことができます。天国で真面目に働けば、新しい命として順次現世に誕生することができます。」
「あの・・・50ポイント獲得できなかったら、どうなるんですか?」
「こちらで指定したお仕事をしていただくのですが、初めのお仕事で1年以内に50ポイント獲得できなかった場合は、再度、こちらで新しいお仕事を紹介させていただきます。その仕事でも50ポイント獲得できない場合は、次の年また新しい仕事というように、1年以内に50ポイント獲得できるまでは永遠に、このハートワークを続けなければなりません。」
「ハートワーク?」
「ええ。現世にあるハローワークと同じです。死後の皆様にお仕事をご紹介する役所です。」
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