追憶1一出会い一

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最寄りの駅に到着し、改札に切符を通す。 まだ駅は出勤のサラリーマンの姿をちらほらと見かけたが、9時を過ぎているせいか朝の通勤ラッシュは免れた。 それでも俺は行き交う人の間を縫うようにして走った。 一本でも早い電車に乗るためである。 ホームへと続く階段を駆け上がり、ちょうど停車中の電車に飛び乗った。 肩で大きく息をしながら、こめかみから伝う汗を拭う。 日頃の運動不足を呪いつつ、俺は空いてる椅子に座ることにした。 そうこうしてるうちに電車は高い発車のベルを鳴らして動き始めた。 加速して、最寄り駅からどんどん遠ざかる。 電車の冷房に俺の汗も徐々にひいていき、 (しばらく涼みながら休める)とネクタイをルーズに緩めながら胸中に呟いた。 俺は鞄の中から必要な書類を確認した。 確認しないと落ち着かないからだ。 写真を貼付した履歴書に職務経歴書など… 家を出る前に何度も確認したから忘れ物も間違いもない。 ちなみに、俺が次の面接を受ける職種はサービス業、喫茶店である。 今まで飲食店やサービス業といった仕事はバイトの経験はあるが、就職には考えてなかった。 まぁ…ある男友達の一言がきっかけなんだけど、そのうち紹介できるだろう。
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