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背は小柄な女性より若干高めだが、俺より背は低いようだ。
またその女性は夏らしい水色のワンピースを着ていて、驚くほど似合っていた。
年齢は20~22歳ぐらいだろうか、パッと見た感じは夏休みの大学生で大人しい雰囲気の女性だった。
「どこ見てるのよ!」
その台詞に虚を突かれて、俺は女性を見上げた。
明らかに女性は怒っていた。
大人しい雰囲気の容姿とは裏腹に、第一声でいきなりである。
まぁ、腕時計によそ見してた俺が悪いんだけど。
「ごめん!ちょっと急いでて」
俺は慌てて立ち上がり、散らばった物を拾い集める。
その女性も怒っていたが、俺に続いて散らばった物を拾い集めた。
「これで全部かな」
辺りを見回し、最後に籠バッグを女性に手渡す。
「よそ見しないで、ちゃんと前を見て歩いてよね」
「うん、ごめん!」
平謝りしたがもう時間がない。
「本当にごめん!」
俺はそれだけ言って、喫茶店へ向かって走りだした。
「ちょ、ちょっと!」
女性の呼び止める声も虚しく、俺の耳には届かなかった。
これが、俺と高野理央とのファーストコンタクトである。
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