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「いやあ、素晴らしい演奏でした」
少し離れた場所から響いてきた声に私も許婚も思わず目を向ける。
黄金色の中華服を着た男が大姐様の前に立っている。
顔は分からないが、すらりと背の高い梅香姐様と向かい合うと、男にしてはやや小柄で中年太りした風な後ろ姿だ。
「貴女の琴をうちに帰ってもずっと聴いていたい」
言葉の額面的な内容よりもまず纏いつくような声が耳に障る。
「どうもありがとうございます」
大姐様は苦笑しながら豊かに黒い束髪の鬢を撫でた。
これは梅香ちゃんが苦手だが丁寧に接しなければならない立場の相手と話している時の癖だ。
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