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第三章:花霞の中から
庭に出ると、白とピンクの花霞と色とりどりの中華服(だけではないかもしれないが)に目がチラチラする。
木に咲いた花は桃が主だが、白梅や紅梅、そして河津桜と思われるピンクの濃い桜も見える。
恐らくはこの時期に花霞を楽しめるような配置に植えたのだろう。
この世界は気候や自然としては元の世界と大きくは変わらないようだ。
ただ、元の世界と違ってコロナウィルスはここでは猛威を奮ってはいないようで(私が意識不明だった病気も他の人に伝染する性質のものではなかったようだし)、一見して富裕層と分かる招待客たちも晴れやかに笑って酒を酌み交わしている。
「賢!」
人の群れの中から若い男の声がした。
周囲の人とは明らかに異質な小麦色の肌をした、服装も中華服とは似ていて少し異なる真っ白なアオザイを纏った声の主が片手を挙げながら笑顔でこちらに近付いてくる。
あれは……。
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