第四章:三姉妹を巡って

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「この子なんて学問より踊りに夢中だし」  少し離れた場所に立っていた黒服の次男坊は母親の言葉にキッと振り返った。 「私は坊ちゃまの踊りは素晴らしいと思いますけど」  率直に褒めてみる。  しかし、黒服の少年は何故か反抗する力すら殺がれた風に目を落とした。  珈琲旗袍の母親も「貴女みたいな子供には分からないわ」という風に肩を竦めると首を横に振って苦く呟いた。 「女の子みたいに踊りなんて」  この世界では女の子というか女性がすることは男性がすることより総じて低級という扱いなのだ。  そうした男尊女卑を害悪として是正する動きも少なくとも私の目に入る範囲では起きていない。
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