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第二章:宴席の面々
「それでは、二のお嬢様のご快気とお誕生日、そして桃花の節句を祝して、乾杯!」
「乾杯!」
中華料理屋じみた提灯灯りを天井から幾つも吊るし、桃の花咲く枝を活けた壺を各所に配した、だだっ広い客間。
昔風の中華服を着た大勢の人たちの前で音頭を取るジェンの隣で、私はせいぜい引きつった笑いを顔に張り付けて杯を皆のワンテンポ遅れで持ち上げるしかない。
口元に運んだ杯の中身がほんのりした匂いからして甘酒らしいことに幾何か安堵する。
一口の半分ほど含むとやはり甘酒だった。どうやら出す前に温めたらしく人肌ほどのぬくみが口の中を通り過ぎる。
「アーメイ」
振り向くと、梅香――この世界では同じ字面で“メイシャン”と呼ばれる従姉が立っていた。
この世界ではいとこも兄弟姉妹と同じ扱いであり、“アーメイ”とは文字にして「二妹」、「二番目の妹」という意味なのだ。
「無理して全部飲まなくていいから」
三歳上の相手は姉というよりむしろ若い母親にこそ相応しいような語調だ。
「分かりました、大姐様」
元の世界にいた梅香ちゃんとは同じ顔をした別人なのだと思おう。
「玲玉」
これも確か私の名前の一つだったと思いつつ、声のした方を振り向いて思わず杯を落としそうになる。
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