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やや。箸の先が白紙を抜いた。その軽薄な音を聞いた猫が、お腹を抱えて笑い転げた。もうヤメヤメ。飽きた。白も黒も菜箸も、みんな海苔の缶へと放る。蓋をしたら、見た目は海苔の缶でしかない。また、どこへ仕舞ったのか忘れてしまいそうだ。狐色ペンでクッキーと書いた。これで誰もがわかんない。これが本当の平等なんだろう。
コーヒーを入れようと、空のマグカップを手にソファーへ跳んだけれど、見事に足を滑らせて、ヒの字に固まったまま海へと落下。のっぺりとした海面をトンカチでかち割る音を聞いた。夏も終わるというのに、随分と粘度が高い海だ。ずぶりずぶりと沈む私の頭を蹴り付けながら、猫が机に飛び移る。
耳に届いたタイピングの音。そうか、お前に書いてもらえばいいんだよ。現代詩とかいうヘンテコなものはお前が代わりに書いてくれ。お前も猫というヘンテコな生き物なんだからきっと相性はいいはずさ。そしたら私がヘンテコ達の集まる詩の窟へ、風船に乗り、持っていくから。 多分そこには何もないけど、流れてくる明日を掬いながら運んでいくんだ。漕ぐ船の名は秋ナスビ、吹く風の名は宙ぶらりん、わたしの名前はチトセモリ。玄に舵取りごめんなすって。
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