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猫が書いた詩、わたしが運ぶ詩
海苔の缶から白紙を引き抜き、テーブルの上にバサリと広げた。発色のいい白が混沌とした昼の空気に侵される前に、●の群れを溢してやる。しばらく待ってみたけれど、●は紙魚の足音に驚き散り散りに逃げ出すばかりで、連隊はおろか行列さえも作ってくれない。思ったほど馬鹿ではなかったみたいだ。こんなはずではなかったと溜め息を吐くわたしを見て、テーブルクロスに阿弥陀を引いて遊んでた銅々色の猫が笑った。
眺めていても埒が明かない。仕方がないと菜箸を手にする。つまみ上げたり、尻を叩いたり、それっぽい並びになるように掻き回してみた。四方から寄せてはみるけど、夏と冬が春っぽくて、なかなか秋が生まれない。隙間が空いたと思った次には、雪崩れ込んでくるホログラムの明日が空白を食べてしまうんだ。明日だって真っ白なのに、白紙の白とは微妙に違うのか、●は紙の上に乗るのを嫌がった。
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