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幸せになるんじゃなかったのか? それなら、三人で老後を迎えた方が良かったのか?
あの日、病院の屋上で夕焼け空が深い青色に変わるブルーモーメントを見ながら彼女が、"兄ちゃんが四〇歳になった時、三人とも独身だったらみんなで一緒に住もう"と言い出した日を思い出す。ブルーモーメントの僅かな時間で三人で約束をしたんだっけ。
久々に彼女に連絡をして、近くのファミレスで会うことになった。
暫くぶりに会う彼女は、げっそりと痩せていて、顔色も表情も無く目の前に置かれたコーヒーをジッと見ている。
「辛いのか?」
「結婚式の日が決まった」
視線をコーヒーに向けたまま、彼女がボソッと呟いた。
「結婚、するのか?」
彼女が初めて顔を上げた。その瞳は涙で潤んで見えた。
「助けて、兄ちゃん」
どう助ければいいのかわからなかった。どんな言葉が正解なのか、わからなかった。ただ、彼女に幸せになって欲しかった。
「出ようか」
頼んだコーヒーに手をつけず、会計を済ませて、彼女を僕の車の助手席に乗せた。
そのまま、勤め先の病院に行き、人目につきづらい階段から屋上に上がった。
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