今日も黄昏時の彼女はブルーモーメントを見つめる

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 ガチャリ  ドアを開けると、今まさに空が優しく暖かみのある赤から、何もかも許して包み込むような深い青への変化していく、ブルーモーメントの始まりだ。 「ねえ、兄ちゃん。あの約束覚えてる?」 「ああ、覚えてるよ。あの時もこんな空だったな」  彼女は柵にもたれながら、深い青色に染まった空を見つめている。  無言の状態が暫く続き、やがて空は包み込むような深い青色から静寂を支配する黒色に変わっていった。 「兄ちゃん」 「んっ?」 「わたし、結婚する。頑張って幸せになる」  何が彼女にそう決心させたのかはわからないけれど、彼女の中で何かが吹っ切れたのだろう。  彼女は笑顔で僕を見ていた。  それから数ヶ月、彼女は婚約者の両親の意に沿うよう、婚約者にもっと好きになってもらえるように努力をし続けたらしい。  しかし、婚約者も婚約者の両親の態度も変わることはなかったようだ。  そしてある日、彼女は精神科からもらっていた薬を時間をかけて一晩で全て飲み、オーバードーズで亡くなった。  彼女の母親から遺書に僕の名前が書いてあったからと電話連絡があり、初めて彼女が亡くなったことを知ったのは、彼女の死から一週間後のことだった。  彼女が亡くなった、もうこの世にいないことを理解できないまま、もう一人の妹と彼女の実家に向かい、線香を上げ、位牌に手を合わせてお別れを伝えた。妹によると、彼女の母親と生前の彼女の数々のエピソードを泣き笑いながら話していたらしい。この時の僕は感情が無くなっていたのか、心が体から乖離していたのか、お別れを伝えたという事以外、何も覚えていなかった。
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