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第1章
もう恋なんてしない絶対、みたいな歌昔なかったっけ?
居酒屋のカウンターで泥酔し、突っ伏しながら呟くみたいに言った僕。
隣に座る顔の良い十年来の友人は、いやそれ多分もう恋なんてしないとか今後は言わないからみたいな逆の意味のやつだね、と憎らしいくらい澄ました顔で答えた。
「あっそ…。でも僕はしないから今後一切恋なんてしないから。」
「はいはい。」
「絶対しないからな!!」
「しないしない。」
「もーなんで女ってあんなしれっとした顔で浮気できんの…。」
「さぁねー。」
さらりと長い前髪を揺らしながら友人は、ほとんど泣き声で溢す僕に対し、形のよい唇に小さな微笑を浮かべる。
彼が流れるような所作で口に運んだグラスの氷がカラン、と音を立てた。
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