最終章 たとえばこんな、ラブソングみたいな

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湯気の立つ温かな湯船で身体を伸ばせば、疲れも一緒に柔らかく溶けていくような気持ちがする。 気づけばつい、さっきまで聴いていた曲が唇から零れ出していて、俺は思わず苦笑を浮かべた。 愛の歌の意味なんて、本気でわからなかった。 耳障りでしかない音楽なんて、耳に付くだけでむしろウンザリしていた。 なのに、この変わりように、自分でも呆れて笑えてくる。 でも、嫌じゃないんだ。 雅己がいるから。 傍にいてくれるから。 風呂から上がると、出来立てのパスタに刻んだ海苔を散らしながら雅己が、さっき俺が口ずさんでいた歌と同じものを歌っていることに気づいて、思わず笑ってしまって。 どうしたの?なんて不思議そうな顔で俺を見る雅己の胸の中に飛び込んだ。 ぎゅっと抱き締め返してくれる雅己の腕の中で、ずっとずっとこのままでいられますようにと、幸せな、幸せな願いを込める。 リビングで点いたままのテレビからは、甘い甘い、ラブソングが流れていた。
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