第1章

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…公開処刑とは、こういった状況を差すのだろうか。 非日常を集約したようなスイートルームには、非日常でないと出逢えやしないようなイケメンが溢れていた。 肩身が狭い。 非常に狭い。 僕以外全員イケメン。 別次元のイケメン。 いやむしろ悲しさすらも感じない。 ただただひたすら彼らの煌めいたオーラに圧倒されるだけだった。 はぁ…なんだか空気まで浄化されてる気がするのは、気のせいではないはずだ。 イケメンは正義だ。 洸がご贔屓にしているという男子は、僕らの1つ歳上だった。 大輝(ダイキ)さんという名の彼は、いつか洸が話していた彼のタイプの人物そのものだった。 筋肉質でがっしりした、でも細身のよく鍛えられていそうな体躯。 どこから見てもスポーツマンタイプの大輝さんは、洸によると元々アメフトの選手だったらしい。 短めの艶やかな黒髪が、優しげな目によく似合っている。 キリッと通った鼻筋がなんとも男らしくて、もうほんとに爽やかさと男らしさが絶妙なバランスだ。 …もうなんだかここまで来るとイケメン評論家みたいになってきて、なんとも切ない。 それよりも洸だよ、洸。 大輝さんが来てからずっと甘々な雰囲気を出して、大輝さんの傍にいる。 僕には普段見せない表情で甘えている。 友達カップルのいちゃこらを見せつけられるその他大勢の気分だ。 うん、僕を友達だと言い切る洸にようやく納得がいったよ。 確かに僕じゃ洸のタイプのはじっこにもかすってない。 大輝さんの肩に頭を寄せるみたいに寄り添い、楽しげに談笑する二人を菩薩のような気持ちで眺めながら、美味しい料理とお酒はどんどん進んでいった。 そして、そんな僕の隣で静かに少しずつお酒を口にしているのが、朔(さく)くんだった。 画面で見るより実物はやっぱり言わずもがな美しい人物だった。 サラサラと流れる明るい髪は、絹糸みたい。 大きな瞳の整った顔立ちは写真よりも幼くも見えるし、ふいに大人びても見える。 今まで見てきたどんな人物よりも、なんだか不思議な魅力でやっぱり僕の目を惹き付けた。 どこか淋しげに見えるのはこの年齢特有の危うさのようなものなのだろうか。 朔くんはそれすらも魅力的に、強烈な存在感を放っていた。
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