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 そんな訳で二人は付き合い始め、順調に仲を深めて行き、結婚する運びとなったのだが、雪は結婚式を挙げることを拒否した。M博士が理由を聞くと、雪は友達がいないからと答えた。  M博士は雪が望むならとナシ婚に一も二もなく同意した。この世の形式的なものの一つである結婚式に時間を費やすのは勿体ない、その時間も隠しごと発見器の研究に当てた方がどれだけ有意義かと思ったのだ。  結婚生活が始まると、雪は仕事を止めて主婦に専念することを望んだ。M博士もそれを望んでいたから許可したが、雪は美人でありながら訪問客に対してなるべく顔を合わせないようにする傾向があり、にも拘らず出かける訳でもないのに常に厚化粧をするのでM博士はどうも可笑しいと思う傍ら遂に隠しごと発見器を完成させた。  で、まず試したくなった対象が雪だったのでM博士はその晩、早速、雪が睡眠中に隠しごと発見器を試すことにして彼女が寝静まってから彼女の頭皮上に十数個の電極をペーストで固定して脳波を測定し、ポリグラフによって記憶を調査し、洗い出した数々のデータを言語化して彼女の隠しごとをモニターに表示した。それによるとこうあった。  私はかなり名の知れた元AV女優で、それからデリヘル嬢に転身。  だから私は美人であっても中々アタックして来る男が自分の前に現れないし、仮令、男と付き合えたとしてもその相手は私を情人として扱い、結婚を前提に付き合ってくれない。  けれど、M博士はアダルトビデオを観たことがない程の仕事人間と見抜いたので私はM博士と後ろめたさを感じずに付き合えたし、M博士も本気で付き合ってくれた。  それでも用心して言葉遣いをなるべく丁寧にして奥ゆかしく装ったところ、M博士が気に入ってくれたのでそのように演技し続けてM博士と付き合って行った。  で、結婚できることになったけど、私はもし結婚式を挙げたなら元AV女優であることがばれてしまうと恐れたので結婚式を拒否した。  同様に私は元AV女優であることがばれてしまうと恐れたので、なるべく他人と顔を合わさないようにしたし、厚化粧をしてカムフラージュした。  M博士は全部読み終え、疑惑が明らかになったものの、この雪が!と彼女が元AV女優であり元デリヘル嬢である事実を受け入れ難かった。にも拘らず興味が湧いて雪のAVを観たくなったが、観れば雪を唾棄すべき女として軽蔑して嫌悪するだろうと思ったから雪を好きでいられるために観ないことにした。  嗚呼、こんなことなら隠しごと発見器を造らなければよかったとM博士は後悔し、すやすやと眠る雪の清らかな寝顔を見て、この女は寝ていても演技をしているのだろうかと訝るのだった。
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