夫に隠したいことがあります

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 希美(のぞみ)は小さい時、親の都合で引っ越しばかりした。大阪、京都、東京、千葉、埼玉、群馬、長野、新潟。数え切れない。親は運送会社の営業職で毎日のように付き合いで飲んで帰って来た。お父さんは仕事をもらうために接待は大事だと言っていたが、二日酔いで朝ごはんも食べずに会社に行く姿は痛かった。転勤ばかりしているんだから付き合いなんて一時のものだったんじゃないかと希美は大人になってから気付いたが幼いときは大人になったら付き合いが大事なんだと思っていた。  今、希美は二十五歳だ。二年前に結婚している。夫は千葉県人で希美が結婚するときに住んでいたのも千葉県だ。大学を卒業して千葉県で就職が決まった。  希美はずっと通信販売の会社で事務職をしている。会社はそんなに大きくなくて二十人従業員がいるだけだ。男と女は半々くらい。海外の商品を輸入してそれをインターネットやカタログから販売している。  夫は希美の二つ上だ。消防士をやっている。だから体格がいい。背も高い方で友達はイケメンを捕まえたねという。
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