第1話 星空学園高等学校

8/47
前へ
/114ページ
次へ
 奥行きや高い天井があるこの場所をテクテクと音が鳴っているような歩き方で進んでいる。愛理はこの図書館の英数字で振り分けられている棚を見て、自身が探している本が置いてある棚をキョロキョロと探していた。 「調べた限りだと、このD列のどこかに光属性の本が置いてあるはずだけど……」  愛理は探索を再開して、ここに来た目的を果たそうとしていた。事前に家で調べた情報によりこの列のどこかにあることは分かっていたが、蔵書数が多すぎてすぐには見つからなかった。  愛理はD列の棚で途方に暮れていると、どこからか年老いた男性が話しかけてきた。白髪で腰が曲がっている初老の男性であった。 「君が探しているのはこの本かね?」  初老の男性の右手には古めかしく見え、表紙の色が多少落ちている一冊の分厚い本を持っていた。その本の表紙には古代光属性魔法と書かれていた。 「見たことも聞いたこともない光属性の書だわ……これを私に?」  愛理がそう言うと初老の男性は君にこそこの本は相応しいと言い、いつか来る試練にこの本は必要だと言って愛理の左手に本を持たせた。左手に掴んだ魔法書を一度見てから初老の男性の方を向くと、既にその姿はなかった。愛理は何が起きたのか理解が出来ず周囲を見渡したり、別の棚に歩いてみてみるもさっき程までいた初老の男性の姿は見えなかった。 「幻覚だったのかな……? でも、この手の中に魔法書があるから幻覚じゃないのよね……」  左手に掴んでいる魔法書を見ながらとりあえず中を見てみようと考えた愛理は、この階層の入り口近くにある複数人が座れる長机の椅子に座った。そこに座り受け取った光属性の魔法書を開いてみると、一ページ目が真っ白であった。そのあと数ページ捲ってみても全てのページが真っ白であった。 「何これ!? 何も書かれていない!?」  愛理は最初から最後のページまで素早く捲るも、どのページにも文字が書かれていない。何でなのと愛理は頭を抱えて一枚目のページ全体を右手で摩ると、突然文字が浮き出し始める。突然のことで何が起きたのか理解が追い付かないが、文字が浮き出たことだけは理解が出来たので愛理は浮かび上がった文字を読んでみることにした。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加