雪女の隠し事・なぜ彼女は茂作を殺害し、夫と子を残し失踪したのか

「幹夫たちが知っている雪女。あれは、私の姉さんお話。私たちにしてみれば、つい最近の話なんだけど、あなた達人間の寿命から考えたら、ずいぶん昔の話なんでしょうね。だから、人間が語り継いでいく中で、内容に誤りが出てきたり、都合のいいように修正されてしまうのはしょうがないかもしれない。先ず、姉さんの名誉のために言うけど、老人の木こり・茂作を殺害したのは姉さんじゃない。昔話では、姉さんが冷たい息を吹きかけて茂作を殺害したことになっているけど、それは間違い。冤罪よ。あれは単に寒さで老人の茂作が凍死しただけ。そもそも高齢者は暑さ寒さを自覚しにくいし、熱中症や凍死のリスクも高いものなの。あまり知られていないけど、熱中症で亡くなる高齢者よりも、寒さで命を落とす高齢者の方が数は多いのよ。姉さんが茂作を見た時には既に冷たくなっていた。それなのに、どうして姉さんが殺害したとして語り継がれているか幹夫は知ってる？」
ユキは、ちょっと機嫌悪そうに幹夫に話を振った。
「まあ、雪女、いやお姉さんがそこにいたとなれば、どうしても、お姉さんの仕業って思うんじゃないんですか。妖怪だし。」