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幹夫はユキの言っていることを否定できなかった。確かに人間は、国籍や皮膚の色、宗教など、自分と異なるものを警戒し、それがエスカレートすると攻撃してしまう。同じ人間という生物でもそうなのだから、妖怪や幽霊となれば、家の中に出てきたゴキブリのように問答無用で排除するだろう。
幹夫が気まずくなって足元を見ていると、ユキは、また幹夫のつむじを冷たい指で触った。
「別に、幹夫を責めているわけじゃない。お前が気にすることじゃない。それに、さんざん人間の悪口を言ったけど、わたしも姉さんも人間は好きなんだ。松田聖子だって好きだし、姉さんとピンクレディーのコンサートにだって行ったことがある」
幹夫は肌の白い雪女姉妹が、ペッパー警部のリズムに合わせてテンポよく踊っている姿を想像し、悪くないと思った。
「ピンクレディーの曲もあります。再生しますか?」
「あらっ、いいわね。今日はあなたに会えてよかったわ」
光も音もないはずの雪山の中で、スマホの明かりとペッパー警部の曲が出現した。ユキが立ち上がる
「幹夫、何してるの?あなたも立ちなさい」
「えっ?」
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