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毎年一月、標高1000mクラスの人気のない雪山でテントを張り、雪景色をお腹いっぱい味わうことが幹夫の習慣だった。30歳会社員・幹夫のこの習慣は、高校1年生の時から続いていて、今年で15回目となる。
新入社員の頃、何度も会社の上司や同僚から「一人雪山で何してるの?楽しいの?」と聞かれたことがあったが、そのたびに「何もしないし、別に楽しいわけではない。ただ、雪が見たくなるだけなんです」と答えると、相手からは「ふうん、そう。君、変わってるね。まあ気を付けてね」と素っ気ない反応と、訝し気な表情が返ってきた。
もしも幹夫が、「へへっ、彼女と行くんですよ♡」と健康的で爽やかで、ニヤついた表情で答えていたなら、会話も大いに盛り上がるのかもしれないが、残念なことに幹夫に彼女はいない。
そういうわけで、今年の一月も、幹夫は、青白い顔で、「一人で雪山を見てきます」と上司に年休を申請し、上司も特段突っ込んだ質問をすることもなく「まあ、気を付けてね」と言ってハンコを押してくれた。
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