4人が本棚に入れています
本棚に追加
聞き終わったあと、再び雪山が沈黙で包まれ、何か話さなければならないという余計な気をまわした幹夫は、「あなた…その、いわゆる雪女ですか?本当に何もしないんですよね?」と聞いてしまった。
隣にいた彼女は、しばらく何も言わなかったが、ゆっくり、ゆっくりと首だけを回し、そして氷のように冷たい指を幹夫の頬にあてながら、「あなたは、まあまあ若い。それに綺麗だ。凍らせてしまうのはもったいない」とまるで悪役のラスボスのような威厳と笑顔を見せつめながらそう言ったあと、「なあ~んてね♡」と言ってケタケタ笑い出した。
「チッ!」幹夫は思わず舌打ちする。
彼女は「そんな怒らないでよ」と言って、再び幹夫の顔に手を当てた時、「えっ?おっ?あああ…」という、驚きと納得と喜びをミックスしたような不思議な声を出した。そのあと、彼女は何かあからさまに、無理に話題を変えようと、
「あと、私の事、“あなた”とか“雪女”なんて呼ばないで。ユキって名前があるんだから。ユキさんって呼びなさい。失礼よ。ところであなた名前は?」と言った。
「はじめまして幹夫といいます。私も茂作のように殺害されるのではないかと思いまして」
最初のコメントを投稿しよう!