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買い物の為にあと三店舗回ったが、迷いそうだったので、俺が案内した。
毎回お店に向かおうとすると、こっちじゃないですか?と長瀬さんはお店とは逆方向を指差すので、俺は毎回あっちですっと修正する。
先に案内しますと宣言しておいて良かった。
買い物はバッグ一つで事足りる量で、あまり重くなかった。
これなら長瀬さん1人でも持てた気がするけど、やっぱり俺が呼ばれた理由は彼女の方向音痴対策としてだろう。
まあ理由はどうあれ、可愛い女の子と買い物出来るのは悪い気はしないので、玄さんに感謝する。
「買い物はこれでおしまいですか?」
「そうですね。リストにかかれてるのはこれで全部みたいです。」
長瀬さんはメモを見て頷く。
ってことはこれ持って帰ればこの買い物も無事に終了ってわけだ。
デートみたいで楽しかったので名残惜しいが仕方ない。
二人で歩いていると、フードコートの中のアイス屋さんが俺の目にキラキラと輝きを放っている。ちなみに俺は甘いものが大好き。
アイス食べたい。しかし、長瀬さんがいるし、どうすれば・・
そっか長瀬さんの分まで買ってくればいいんだ。
「長瀬さん、ちょっとここで待ってて。」
俺はすぐさま走ってアイス屋さんに向かった。
メニューを見ながら、どれにしようかと悩む。
長瀬さんはどれが好きかな。
よし、これとこれにしよう。
結局一番人気と二番人気と三番人気のアイスを選んだ。
カップにアイスを入れてもらい、長瀬さんの元に戻ると若い男性二人に長瀬さんが話しかけられていた。
男性二人はチャラい感じで金髪ロン毛と坊主の男で、長瀬さんに何か話しているが、明らかに彼女は嫌がっている。
これって多分ナンパだよね。
長瀬さん可愛いからな。1人にするべきじゃなかった。
怖いけど勇気だして行くしかないよな。
「長瀬さん、お待たせ。アイス買ってきたよ。ってこの二人は知り合い?」
俺は何も気付かなかったという設定で戻ってみることに。果たしてこの判断が吉と出るか凶がでるか。
「お前誰?」
金髪ロン毛が俺に近付いてきて、睨み付ける。
ヤバい、怖い。
「いやあなた方はどちら様ですか?」
「お前ムカつくな」
「えっ?」
胸ぐらをいきなり捕まれた。
そして、気が付くと俺は頬に強い痛みを感じて地面に倒れていた。
そうか殴られたんだ。床には両手で持っていたアイスが落ちて床の温度で溶けていく。
「俺様に口答えしてんじゃねぇよ、このクズが」
「がはっ」
倒れている俺の腹を金髪ロン毛は何度も蹴り、途中から足が増えた気がしたので、恐らく坊主も一緒になって蹴ってるんだろう。
路地裏じゃなくて、こんなショッピングタウンでこんな殴るかね、こいつら馬鹿だろ。
けど耐えるしかない。そうすれば、長瀬さんを守れる。
「君たち何をやってるんだ!」
「やべっ、逃げるぞ。」
遠くから誰か男性ぽいっ声がする。
男たちは足を止めて直ぐさま逃げていった。
今さら遅いだろ。監視カメラに顔がバッチリ写ってるっての。
「いてて。」
俺はなんとか立ち上がると荷物を拾い上げて壁に持たれ掛かりながら、長瀬さんを捜す。
しかし、見つからない体はもちろん痛いがゆっくり歩きながら捜すも見つからない。
「どこに行ったんだ?」
その後も少し捜したがさすがに体が痛くて近くのベンチに座り込む。
そして、長瀬さんのことを頭で考えながら意識を集中する。するとなんとなく長瀬さんがいるような気がする場所がわかった。直感に導かれるように歩いて行くとベンチに座っている長瀬さんを見つけた。頭を抱えており、表情が見えない。
「やっと見つけましたよ。怪我はありませんか?」
俺が声をかけると、長瀬さんは恐る恐る顔をあげた。目が赤くなっている。恐らく泣いていたんだろう。
「アタシ、そのごめんなさい。何もできなくて・・」
「怪我はないですか?」
「大丈夫です。」
言葉を途切れ途切れに涙を流す長瀬さんを見て怪我でもしているのではないかと思ったのだが、怪我はしていないようで、心底安心した。
「なら良かった。」
「良くないです。アタシのせいで・・」
「俺は大丈夫です。長瀬さんが無事なら。さあ帰りましょう」
涙を流す長瀬さんの肩に手を回して俺は帰路へと赴いた。
喫茶店に着く頃には長瀬さんも少し落ち着いていて、さすがに今回のことをどう玄さんに伝えればいいか分からなかったので、喫茶店の入り口で長瀬さんに荷物を渡して帰ることにした。
寄っていって欲しいと長瀬さんに言われたが、今回は断らさせてもらった。
さすがに早く休みたい。明日仕事大丈夫かな。
俺は家に帰ると疲れがどっと襲ってきて直ぐに眠ってしまった。
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