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「怖くなったんです。」
「えっ?」
「前にも人が怖くなったことはあったんです。けど少しずつ大丈夫になってきて玄さんのお店で働けるようになりました。けどあの時以来、また人と話すのが怖くなったんです。アタシが話しかけられたせいで夕凪さんは殴られちゃったじゃないですか。だからアタシが誰かと話すとまた同じことが起きるんじゃないかと思うと怖いんです。お店では接客上、お客様と話す必要があります。けどそれすら出来る自信がありません。だからこれ以上迷惑はかけられないと思い、玄さんのお店を辞めることにしました。」
長瀬さんはうつむいたまま話してくれた。やっぱり長瀬さんは優しい子なんだと思う。人が傷付かないように、玄さんに迷惑がかからないように自分のことよりも他人を優先している。
「やっぱりこの間のことが原因なんですね。人と話すのが怖いか・・すみません。そんな怖い思いをしているのに理由を聞きに会いにきてしまって。電話とかの方が良かったですよね。」
「いえいえ、夕凪さんは平気です。むしろ来てくれて・・」
「けど、その辞める理由だと玄さん怒っちゃいますね。」
「アタシの我が儘ですもんね。怒って当然です。」
「いえいえ、そうじゃなくて、玄さんにとって接客出来ないことなんて全然迷惑に感じないと思いますよ。それに接客以外にも手伝えることはいっぱいあると思んです。表にでることだけが仕事じゃないですよ。だから接客出来ないから辞めるって言うと怒っちゃいますよ。」
何も話さないが、長瀬さんの表情から辞めることについて悩んでるように感じた俺は助言をしてみる。
「玄さんにこれからのこと相談してみませんか?」
結局の所、どうするかは本人と雇用主であり、親族でもある玄さん話すのが一番いい。自分の発言に自信がないわけではないが、やっぱりお店で働き続けるには玄さんの協力は絶対だ。それに玄さんなら俺よりももっといい助言が出来るかもしれない。
「・・はい」
長瀬さんの返事を聞いて俺は時計を見る。
19時30分
この時間ならまだお店にいるだろう。
「じゃあこれから行きますか」
「今からですか?」
「はい。思い立ったが吉日です。行きましょう。」
ぐぅ~
立ち上がると同時に俺の胃袋が空腹の鳴き声をあげた。
「玄さんの所で何か食べさせてもらいますか」
恥ずかしさもあり、空笑いでなんとかごまかす。
いつもはご飯食べてる時間だから、お腹減った。
「良かったらここで一緒に食べませんか?簡単なものしか出せませんけど。」
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