Ⅰ 『君主論』要約

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Ⅰ 『君主論』要約

1 君主国の種類 国々は君主国と共和国に分かれ、 君主国はさらに、世襲君主国と新興君主国に分かれる。 新興君主国には、全く新しい君主国と、 既存の君主国に併合された地域がある。 新興君主国には、元君主国か元共和国か、 獲得方法はどうだったかなどによる区分もある。 2 世襲の君主国 支配は、たやすい。 前例を踏襲し、不時に時を稼げばよい。 連続は連続につながり、変革は変革を呼ぶ。 3 複合型君主国 (1) 一般に、併合した地域を治めるのは難しい。 征服に加害はつきものだから、恨みは避けられない。 歓迎したものも、必ず幻滅するから扱いづらくなるし、 かといってむげにもできない。 それにつけても住民の支持は必要だ。 また謀反(むほん)は、いっぺん防げばあと楽になる。 (2) 言語風習が同じで、 (願わくば専制の)世襲君主国だったところは、まだよい。 君主の血筋を根絶し、あと同じに保てばよい。 (3) 言語風習が違うと大変だ。 ① 君主自ら出向いて治めるか、移民兵を置くとよい。 自分が住めば不穏な動きもすぐ分かるし、部下の行き過ぎも防げる。 移民兵なら安上がりだし、被害を受ける者は少なく、 いても追い出されて貧困に陥るし、 被害を(まぬが)れた者もほっとするやら恐いやらで逆らわない。 ② 強い外部勢力を排除し、弱い国々を従えねばならない。 弱小国は生かさず殺さず、つけあがらぬようにしつつ味方につけ、 強いライバルは徹底的に叩いて手下を取られないようにする。 そのためには、先を読むことが必要である。 先読みの結果必要とあれば、戦争も()してはならない。 4 アレキサンダー没後のペルシァで、反乱が起きなかった理由 トルコのような専制君主国家は、まとまった集権国家なので、 征服に(かた)いが維持に(やす)い。 フランスのような封建制国家は、分かれた分権制国家なので、 征服に易いが維持に難い。 ペルシァは、前者だった。 5 市民の自治制をとっていた、被占領地の治めかた 君主の支配下にあった都市や地方なら、 友好的な寡頭政権を現地住民に作らせればよいが、 自由な暮らしをしてきた共和制都市なら、 滅ぼすか自ら治めるしかない。 6 武力と力量による新君主国 新君主は、力量か幸運による。 どちらかだけということはないが、 力量によったほうが、苦労はしてもあと安泰である。 新秩序をつくる際には、旧秩序の受益者が敵に回るし、 新秩序の支持者も、畏怖心と猜疑心をもつから、難しい。 やはり他力本願は駄目で、 自分の力量で人々を従えてゆかねばならない。 7 他人の武力、または幸運による新君主国 他人の力や幸運は、変化しやすく、あてにならない。 チェーザレ・ボルジア(ヴァレンティーノ公)は、 運悪く失敗したが、力量では素晴らしい人だった。 8 非道による君主 成り上がりには、幸運や力量による場合のほかに、 非道による場合と市民の支持による場合がある。 陰謀や虐殺という非道は力量と呼べないが、 それでもその後、安泰だった例はある。 その理由とは、必要な非道を決然と行った後は、 それを蒸し返さず、臣下の利益も図ったことである。 加害行為は一気に行い、恩恵は小出しに与えるべきだ。 しかしもちろん、油断は禁物である。 9 市民の支持による君主 貴族の支持によるときと、民衆の支持によるときがある。 貴族は高慢なので扱いづらいし、少数なので恐れるに足りないが、 民衆は穏当なので扱いやすいし、多数なので敵に回すと恐い。 どちらの支持で立ったにしても、 大事なことは、民衆を味方につけるということである。 10 国力 十分な軍隊を持てない君主は、城市の守りを固め、 民衆の支持だけをつかんでいればよい。 そのような民衆は、攻められても士気が高いし、 醒めた時には、あとへ引けなくなってしまっている。 11 教会君主国 力量か幸運で手に入れてしまえば、 あとは信仰と伝統があるので安泰。 ただしローマ教皇は、武力によって今の世俗的繁栄を得た。 願わくば今後は徳性により、栄えていただきたい。 12 武力の種類、なかでも傭兵軍 武力には、自国軍、傭兵軍、外国の援軍、混成群がある。 傭兵軍は、あてにならない。 しょせんは金目当てなので、いざとなったら逃げやすく、 勝てばさらなる欲のため、勝手に暴れるようになる。 やっぱり自国軍がよい。 イタリアは、傭兵に頼ったせいで没落した。 13 外国支援軍、混成群、自国軍 外国からの援軍は、なおたちが悪い。 勝ったら、次は自分がやられる。 やはり、自国軍がよい。 混成群は、中ぐらいに悪い。 14 軍隊に関する君主の任務 君主の唯一の任務は、軍備である。 軍備によって、国は建てられ、保たれる。 実地や思考の訓練も、大事である。 15 君主が賞賛、または非難される原因 事実を離れて当為を論ずる君主は、破滅する。 身を守るため、地位に関わる汚名は避けるべきだが、 必要な時は、それも恐れてはならない。 16 鷹揚(おうよう)さと吝嗇(りんしょく) 君主は、けちだと言われることを恐れてはならない。 鷹揚にしていてみ、自分のものを失って(さげす)まれるか、 他人のものまで取り上げて恨みを買い、民衆の支持を失うだけだ。 けちだと言われても、国が豊かで強くなれば、 (おの)ずと評判は高まる。 ただし、これから君主になろうとする者には、 鷹揚とみられることが必要である。 また、軍隊が他国で略奪できるときは、大いに鷹揚にすべきだ。 17 冷酷さと憐れみぶかさ、恐れられることと愛されること 君主は、憐れみぶかいと評されるほうが良いが、 新君主などは特に、必要とあれば冷酷にならねばならない。 冷酷さが国を守り、憐れみが国を滅ぼすこともある。 また君主にとっては、愛されるより恐れられるほうが安全だ。 人間なんて、自分勝手なものだからだ。 ただし、理由もなしに国民の財産などを奪ったりして、 恨みを買ってはならない。 18 君主と信義 君主は、不信義も恐れてはならない。 君主は、人間の法と野獣の力を使い分けられねばならない。 人間自体が、そういうものだからだ。 ただ、信義深いと思われることは重要である。 しかし、大多数の者にそう思わせればよく、 あとはひたすら手段を選ばず、国を維持してゆくべきだ。 19 軽蔑と憎悪を避ける法 多数人の名誉や財産を奪わない。 弱みを見せない。 民衆の支持があれば、内憂も外患も恐くないだろう。 フランスのように、民衆も貴族もひいきしないよう、 高等法院のような裁定役を他に作るのもよい。 昔のローマは強欲な軍隊があったため、 皇帝達は善良でも消され、残酷でもそれゆえに 非業の死を遂げるということがあった。 しかし今では、トルコ・エジプト以外はどこでも、 軍隊より民衆の力が大きいので、そういう難しさはない。 20 城塞その他の有益性 一般的には、次のように言える。 新しく建てた国は、武装せねばならない。 併合した地域は、武装を解くべきである。 自分の国を分裂させて治めると、外敵にやられるのでよくない。 新君主は、進んで敵を作り、倒してでも、 勢力を拡大してゆくべきだ。 新体制に疑いを持つ者達は懐柔し、 旧体制を裏切った者達は信じるな。 城を作るのもよいが、民衆が外敵につけば役立たないので、 それより民衆を味方につけるべきだ。 21 尊敬される法 (1) 大事業(戦争)を行い、優れた手腕を示す。 (2) 他者が争っているときは、敵味方をはっきりさせる。 当事国が強ければ、勝者の感謝を得て、敗者の恨みをはね返せる。 当事国が弱ければ、勝者を従わせ、敗者を滅ぼせる。 自分より強い相手とは組まない方がよいが、やむを得ぬ場合もある。 (3) 君主の威厳を保ちつつ、功労者を顕彰し、市民を鼓舞し、 様々な集団に配慮し、会合を持って人間味と広い度量を示すとよい。 22 君主の側近たる秘書官 君主は、自分が理解できないことでも、 他人が理解しているかどうか、見分けられなければならない。 側近を見分け、自分でなく君主を思う人物を、 分をわきまえさせたうえで、とりたてねばならない。 23 追従(ついしょう)者を避ける法 追従者に(だま)されたり、 臣下から甘く見られたりするのを防ぐには、 選ばれた賢者だけに、こちらから尋ねた時にだけ、 自由に意見を言わせることである。 しかし、側近に頼るのではなく、君主自身が判断し、 決めたらそれを守り通すべきである。 24 イタリア君主達の失地の理由 新君主が国を栄えさせるのは、二重の栄光。 世襲君主が国を失うのは、二重の不面目。 イタリアの君主達は民衆か貴族の支持を失い、 自国軍もなかったため、国を失った。 それは幸運に頼り、力量を持たなかったということだ。 25 運命について 運命はどうにもならないが、 君主の成功不成功は、それだけにはかからない。 運命の変化に応じてやり方を変え、 運命を力量で切り開いていく君主は、成功しやすい。 26 イタリアを外敵から解放するためのすすめ イタリアは今ひどい状態にあり、 そこから救い出してくれる君主を必要としている。 その君主は、ロレンツォ・デ・メディチしかいない。 常備軍さえ整えれば、イタリアは統一できる。  頑張れ、メディチ!
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