序章 大陸烽火

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「あたしは……ここにいていいんですか?」 死にそうなほど申し訳ない表情で尋ねるシャラを温かくフォローしたのは、彼女が恋心を抱く黒衣の騎士ファウストだった。 「終わった後に笑顔で迎えてくれないか? ごめんなさいではなく、お帰りなさいと言ってくれないか? ここに居ていいのかなんて思わないで、ここに居たいと願ってくれないか?」 ファウストの優しい言葉に、彼女の目から涙が溢れた。 ーー シャラ引渡し拒否の回答を受け、帝国軍は本格的な奪還作戦に入った。 既にレジスタンス2つを壊滅させていた熾天騎士団の精鋭を中心とした攻撃隊はおよそ300名。 前月と違い、守備に回ったガイエスブルグのゲリラ隊たちと帝国軍の間で血みどろの激闘が繰り広げられ、17人の死者と38人の重軽傷者を出しながらも、ゲリラ隊はどうにかガイエスブルグを守り切った。 意外だったのは、シャラ暗殺未遂事件を起こし、地下牢に幽閉されていた白百合の動きだ。 計略を用いて牢を脱出した彼は、仲間だったはずの帝国の騎士を殺害し、敵だったはずのガイエスブルグ守備陣の救護活動に協力したのだ。 ヤツは、敵だったはずでは?…… 白百合の不可解な行動は、ゲリラ隊の首脳陣をしばらく混乱させた。
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