序章 大陸烽火

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ーーーー 帝国に反旗を翻したのはゲリラ隊だけではなかった。 火炎魔術の才能とヘテロクロミアの瞳を持つ美貌の大貴族オスカー・フォン・シェーンブルク侯爵は、ガイエスブルグの状況を知って決起することを決断した。 志願兵としてガイエスブルグにいた騎士フリッツを呼び戻し、自ら異世界に赴いてヘッドハンティングしてきた異世界の戦士「昆虫騎士ホーネット」を仲間に加えた彼は、ガイエスブルグ攻略のために帝国軍が出陣したタイミングを見計らって、手薄になったかつての住まい、シェーンブルク城奪還作戦を敢行したのだ。 敵もそれほど甘くはなく、シェーンブルク城には熾天騎士団員数名を含むそれなりに強力な守備隊を残していたが、オスカーの魔力と昆虫騎士ホーネットの戦闘力は、敵の想定を遥かに上回っていた。 熾天騎士団5000人の中で最高位の200人に当たる熾天騎士の一人、「光速の騎士」プロキオンをバロウルに続いて失い、ガイエスブルグ奪還に失敗した帝国軍は、同じ日にもう一つの居城を奪還されるという惨敗を喫したーー オスカーの策はそれだけに留まらなかった。 西の大諸侯シュタイアーマルク侯爵に決起の動きありーーオスカーが流した偽の情報にまんまと騙された帝国軍は、自軍の天才魔導師「陽天使」ベアトリスを派遣し、禁忌の秘術「反陽子爆裂(アーク・トゥルス)」をもってシュタイアーマルク城を2000の兵もろとも灰塵にしてしまう。 シュタイアーマルク侯爵家の当主オットーは、この時点では完全に帝国側の貴族だった。 いよいよ、これからだーー ガイエスブルグ、そしてシェーンブルクに祖国再興の有志たちが続々と集まる一方で、帝国も反乱軍を一網打尽にするべく本国から増援を呼び始める。 大陸に燻る戦火は、いよいよ激しく燃え上がろうとしていたーー
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