援軍到来

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ギストリア暦340年元旦ーー 大陸に覇を唱える北の大国グランツ・ヴァルナ帝国。絶対的に見えたその覇権に陰りが見えてきたのはこの年だったと後世の歴史家は言うだろう。 つい4か月前は最後に残ったエールラント王国も首都クラティアを包囲された状態で、まさに大陸全土が制覇されるところだった事を思うと、隔世の感がある。 負傷者たちもあらかた回復したこの日、ガイエスブルグ防衛戦において功績のあった者たちの顕彰式が行われた。 熾天騎士団員が装備していた数々の戦利品を顕彰者にーー そんな提案もあったが、公太子ハインリッヒはそれを却下した。 「戦利品は報酬にするより、有効に使用できる者に渡したほうがいい。」というのがその理由だ。 そんないきさつがあり、顕彰者にはマジックアイテムではなく純金のバッジが与えられることとなった。 「帝国の犬だった人間が2人もいるのか……」 「地下牢にいたヤツも敵の騎士を葬ったらしいぜ?さすがに今日は呼ばれてないみたいだがな。」 まだ多少のわだかまりがある志願兵がいるものの、彼らの活躍と、それを公太子ハインリッヒが評価している事実を前に、もはやその声は大きくはなかった。
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