逆襲の魔人

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秒速400ヤード(約360m)で頭上から襲いかかる炎の槍は疾走するエトーにかすりもせず、まだ10体ほど残っていた骸骨兵と泥兵たちは、彼の放つ神速の刃の前に瞬く間に崩れ落ちた。 500ヤードの窪地をエトーが走破するまでに要した時間は僅か3.5秒。しかも敵を倒しながら、である。 常人と比べて30倍、騎士と比較してすら10倍強のスピードに一体誰が対抗出来るだろう? 魔法使いの呪文には詠唱が必要だ。口が1つしない以上、最初の術の発動が終わるまで、他の術を発動することは出来ない。つまり、発動中に敵に接触出来さえすれば、魔法使いには為す術もない。そしてエトーにはそれを実現出来るだけのスピードがあった。 これでチェック・メイトだ── 後はゲイナーと名乗るこの魔法使いを取り押さえ、持っている水竜剣の真贋を問えば良い。万一偽物であっても、至近距離にいる人の心を「読む」ことの出来るエトーにとって、尋問は容易いことだった──ただ、問えば良いのだから。 超スピードで斜面を駆け上がったエトーはゲイナーの持つ水竜剣を右手の刀で叩き落とし、返す左手で彼の喉を鷲掴みにする。無論のこと、通常速度のゲイナーに回避する術はない。 「終わりだゲイナー、その水竜剣は──」 エトーの言葉はそこで止まった。
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