悪魔の諜報

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 部屋は質素なモノだった。テーブル一つに椅子二脚。そして、先に火をつけて貰った暖炉が一つ。  白百合と情報屋は、テーブルを挟んだ椅子に座る。 「じゃ、とりあえず。帝国の動きはどんなになってる?」  白百合から口火を切る。 「まず、解放軍が発足したのはご存知でしょうが。その解放軍との戦いで多数の死者・負傷者を出した帝国陸軍は少年兵をかき集めて補充してる状況であると」 「ふぅん。まぁ、そんなモンよね」  白百合はつまらなさそうに呟く。 「あとは、熾天騎士団長のエトー閣下がファスキアの港町マルティーユにいるとか」 「……なんでそんなトコに団長がいるわけ?」  声からして呆れてるらしい白百合が尋ねると「残念ながらそこまでは……」と情報屋が答える。 「まぁ、いいや。帝国軍の動きについては?」  更に白百合が尋ねる。 「それについては最近、兵隊が不足しているため首都を守っている帝国陸軍第1軍団がローゼンベルクへ向かって出陣したらしい。司令官は臆病者で有名なあの、ステッセル様だ」  ふぅん。白百合が呟く。彼……ステッセルは前線には出て来ない事で有名だ。 「あと……コレは頼まれたモノですぜ」  そう言って情報屋が差し出したのは、折り畳まれたパルプ紙だった。  裏の世界では機密事項並みの情報は、パルプ紙に書いて渡される。そうすれば念話による盗聴も防げるし、何より読んだあとにすぐに火に掛けられる。他人に知られずに証拠隠滅が出来るのだ。
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