序章 大陸烽火

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ディオニスは皇帝であると同時に優れた魔法使いでもあった。 皇帝になったことで使える金が桁外れに増えた彼は、聖宝を安置していた異世界の島に城を築き、皇太子時代より研究してきた「空船」を完成させ、異世界の住人をさらって合成獣の研究を行い、青銅巨兵、魔力砲、火炎杖など数々の魔法兵器を充実させて大陸統一に乗り出した。 即位の2年後には南に隣接するファスキア王国を併合し、さらに翌年には「ハドリア海の宝石」と呼ばれる4つの都市国家の連合体「グラナダ王国」の連合艦隊を一戦で壊滅させ、和平交渉に出た国王を支配のサークレットで篭絡して王国をその軍門に下した。 即位から6年が経過したギストリア暦336年、「騎士と音楽の国」ローゼンベルク大公国に向けて、帝国はその牙を剥く。 貿易戦争から端を発した戦いだったが、愛国心旺盛な国民性と騎士の戦闘力の高さのせいもあって、帝国は総司令官が戦死するほどの苦戦を強いられた。 戦死したカンテミール公爵に変わって赴任してきた陸将ステッセルは策士だった。 野心家で強欲な敵には寝返りを持ちかけ、正義感の強い敵には住民に対する略奪を仕掛けて誘い出すなど、多彩な戦術を用いて彼は各地でローゼンベルク軍を撃破した。 ギストリア暦338年秋ーー 遂に公城ファルケンシュタイン城が陥落し、大公ルードヴィヒは戦死、公太子ハインリッヒは行方不明、公女エルセベートは虜囚ーーという悲劇的な結末を迎え、ローゼンベルク大公国は滅亡した。
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