序章 大陸烽火

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帝国の大軍を辛くも撃退したエールラント王国の女王アルテリスは、防衛司令官ハリデーの助言を受け、次なる作戦に打って出る。 「ローゼンベルク大公国奪還作戦」である。 如何に帝国が強大とはいえ、兵の数は有限だ。エールラントにこれ程の大軍がいる。ということは、裏を返せばローゼンベルクは今、手薄だという事だ。 ローゼンベルクで動乱が起これば、エールラントの帝国軍は引き揚げざるを得ないだろうーー 有力な占い師の術により、行方不明だった公太子ハインリッヒの生存が確認されたため、祖国再興の希望を得たランバートやファウストは、この作戦に二つ返事で同意した。 また、クインズベリーにいた法皇の独り娘ミラを保護してクラティアに逃げ延びていた修道士ウラウも、別の理由で同行を望んだ。 ウラウは「人を殺めてはならない」という教会の教えを破ったことから狼化の呪いをかけられており、それを解く力を持つはずの天才少女ミラは、クインズベリーの惨劇を見てしまったことから「黒化」という呪いにかかり、白魔術が使えなくなってしまっていたのだ。 呪いを解く鍵はミネルヴァの梟が知る。梟はローゼンベルクにある「黒の森」にいるーー 占い師はウラウとミラにそう告げていたのだ。 こうなれば、ウラウとしても行かないわけにはいかない。 エールラント宮廷が驚いたのは、本来ローゼンベルクとは何の関係もない元帝国の女騎士シャラや、クラティア防衛のために異世界から呼ばれたメンバーたちのほとんどが、ローゼンベルク同行を承諾したことだった。 もはや彼らの間には、損得勘定を抜きにした「絆」が出来上がっていたのだ。 10月末ーー 「ゲリラ隊」と名付けられた彼らは、海が荒れる直前のタイミングで島国エールラントを出て大陸に到着した。
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