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禍福は糾える縄の如し。
苦労してガイエスブルグを奪還した彼らは、しかし幸運ばかりに恵まれた訳ではなかった。
来訪して数日後、若き弓使いランディが、元帝国の女騎士シャラの命を狙ったのだ。
襲撃は夕暮れ、シャラが城周辺の見周り中だったのが幸いした。
彼は恐るべき使い手だったが、魔力刀「神刀ハヤブサ」を差していた彼女は、負傷しながらも得意の居合で敵の猛攻を防ぎ切った。
ランディというのはもちろん偽名で、尋問の場で白百合と名乗ったこの若い男は、帝国から差し向けられた暗殺者だったーー
やがて、暗殺失敗を悟った帝国から使者が来たことで、ゲリラ隊のメンバーたちはことの真相を知ることになった。
白百合に狙われた彼女は、ほんの数ヶ月前まで大陸最強と言われる「熾天騎士団」に所属していた騎士で、重力を自在に操って高速移動する技と、たぐいまれな剣の腕を見込まれた将来有望株だった。
ところが彼女はある日、魔物討伐の帰りに、帝国軍の魔導将校を殺害して騎士団を脱走してしまう。
帝国法に照らせば死罪は確実であり、先のランバート救出作戦で偶然シャラの存在を知った帝国が、彼女の引渡しを要求してきたのだ。
もう、ここにはあたしの居場所はない……
帝国に引渡されることを覚悟し、今までの仲間たちに遺書まで書いていた彼女は、幹部会議で引渡し拒否が決まったことを知らされ呆然とした。
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