たまごサンドと静かな午後

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たまごサンドと静かな午後

「美鈴さーん。卵が無いですよぅ」  冷蔵庫に頭を突っ込むようにしていた少女が、2つに結んだ髪をぴょんこぴょんこと跳ねさせながら、テーブルを拭いていた私の元へと駆けてきました。 「あら大変!もう八百屋さんは開いてるわね。みーこちゃん、おつかい頼んでもいいかしら」 「はい!お任せであります!」 腰に巻いた子供サイズの淡いピンクのエプロンを外し、玄関に置いてあるかごバッグを持っているみーこちゃんに、がま口のお財布を手渡すと「行ってきます!」と元気よく出ていきました。 「慌てなくて大丈夫よー!・・・ふふっ、相変わらず元気いっぱいね」 静かに扉を閉めて店内に目を向けると、今日も柔らかな風がふわりと窓辺のカーテンを揺らし、その下に置いてある1メートル程に育ったパキラの葉は、春の日差しに青々と輝いています。 「そういえば、みーこちゃんがたまごサンドを食べたがっていたわね」 彼女の大好きな厚焼き玉子のふんわりサンドイッチ。 想像しただけで頬が緩みますよね。
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