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♪〜♪〜
午前9時30分。
ボサノバの軽快で爽やかな音楽を小さな音量でかけて、カフェ・れんげ草は静かにOPENします。
アコースティックギターと、優しい、春の川のせせらぎのような囁く歌声。
昔、1度だけお会いした、まだ駆け出しの歌手だというチコさんがくださったものでした。
このお店を始める時、音楽をかけるなら必ずこれにしようと決めていたのです。
丸いテーブル席が3つと、シンプルな作りのキッチンがあるだけのこぢんまりとした店ですけれど、ポプラの木のぬくもりに包まれた内装は、我ながらとても気に入っています。
透明なガラスのシュガーポットに、まっ白の角砂糖を補充していた頃、みーこちゃんがおつかいから帰ってきました。
「ただいまです〜っ。はい、卵買ってきました!」
「おかえりなさい。ありがとうね」
するとみーこちゃんは、卵を受け取ってキッチンに戻ろうとした私のスカートの裾を掴みました。
「これ、八百屋のおじさんがくれましたっ。チョコチップのクッキーです!2つ頂いたので美鈴さんにも1つあげます」
「まぁ、ありがとう。じゃあお客さんがいらっしゃらなかったら、おやつの時間に食べましょうか」
「はぁい!」
片手をぴしっと上げて元気に返事をしたみーこちゃんは、奥の部屋にある洗面所へ手を洗いに駆けていきました。
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