ダイサギ翔ける冬の朝

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「朝のコーヒーってのは贅沢だねぇ」 堤さんが、コーヒーカップに鼻を近づけて幸せの唸り声をあげました。 「ダイサギの写真、楽しみですねぇ。双眼鏡を貸して頂いた時に見た地球照も感動しましたぁ。毎日見慣れた空も、じっくり見てみると色んな知らない事が沢山あるのですねぇ」 みーこちゃんは、厚切りの食パンにたっぷりの餡子とバターが乗った小倉トーストをテーブルへと運びました。 「下を向いていたら、虹は見えない」 おしぼりで手を拭いた堤さんは、トーストを手に取って言いました。 「世界の3大喜劇王、チャップリンの名言。俺が空ばっかり撮ってるのはね、下を向いて歩いている人に、今見てる世界じゃなくて見る場所を変えたら幸せはいっぱいあるって事を、俺の写真で気づいて貰えたらってね。これ以上の事はねぇと思うんですよ」 サクッという軽い音をたてて小倉トーストを頬張った堤さんは、うんうんと頷いて「程よい甘さ。美味しいです」と白い歯を見せる満面の笑みを向けてくださいました。
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