神様からのプレゼント

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 工場勤めの夫は、今週は早番だ。勤務が終わるのが、夕方の三時五十分。普通なら中古の軽四で通勤するのだが、この間スピード違反で免停を食らった。いまは、会社のマイクロバスで駅まで行き、十五分ほど歩いて帰ってくる。まっすぐ帰ってくれば、遅くとも五時前にはアパートに着く。  もちろん、夫はまっすぐには帰ってこない。  車で帰るときは、郊外のパチンコ店に寄るのが常だった。車通勤できないいまは、駅前のカラオケ店で、一人カラオケをやっているようだ。  だから、本当はこんなに早く夕飯を作る必要など、ないのだ。  でも、めったにないことだが、一度、早く帰ってきたことがある。たぶん、ふところがすっからかんだったのだろう。夕飯の支度ができていないのを見ると、あたしを殴った。 ――腹をすかせて帰ってきたのに、メシもないのかっ。  それ以来、まっすぐに帰ってきたときにそなえて、早く作っておくしかなかった。  もちろん、あたしが先に食べてしまうなど、論外だ。  一度だけ、夜九時をまわっても帰ってこないから、先に食べたことがある。帰ってきた夫に、顔が変形するかと思うほど殴られた。 ――だれのおかげで食えると思ってるんだ。  そのころからだろうか。夫の暴力はひどくなった。少し気に入らないことがあると、すぐに手をあげるようになった。
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