001 闇夜の鍵師

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 雨はますます酷くなっていく。 (こうなったら、強行手段に出るしかない)  碧生は来た道をまたアパートへと折り返し、傘を貸してくれたあの店に戻った。  軒下で傘を畳んでいると、男が「お帰りなさい」とガラス戸を開けてくれた。  中に入るのは初めてだった。四畳半ほどの店内の手前棚には食料品、奥の棚には日用雑貨が並んでいるが、売り切れてしまった商品の仕入れをしていないのか、ところどころが空いたままになっている。  店内奥には扉がひとつあって、そこから先が住居になっていそうだ。そこに誰かがいるのか、磨りガラスの向こう側は灯りが点いている。  碧生は奥の棚にひとつだけ残されていた梱包用のテープを手に取って、カウンターに向かった。 「すみません、これをください。あと、もしあったらで結構なんですが、金槌を貸していただけないでしょうか」 「いったい何があったんです?」  男は目を瞬かせている。 「実は家の鍵を落としてしまったみたいで」  碧生がこれまでのいきさつを説明すると、彼は眉根を寄せた。
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