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頭の上から降ってくる、聞き慣れない男声。
驚きで心臓が高鳴ったわたしは、慌てて視線を地面に落とす。
「あ、あり、ありが、ありがとう、ございます」と、吃りながら一礼したわたしに、柔らかい声が降った。
「おめでとうございます。桜もお祝いしてくれていますよ」
そっと伸ばされた指先が、ほんの一瞬、わたしの髪に触れ。
わたしが抱えているシラバスに、桜の花弁が置かれた。
「俺も同じ学科です。講義も当選しました。講義で会ったら、よろしくお願いします」
ぺこりと下げられた、男の子の頭。
わたしは再度一礼しながら。
波打つ心臓の音を、とくとくと鳴る鼓動を。
自分の耳で、聞いた。
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