大学二年・夏

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大学二年・夏

 機械情報工学科は五十四人。  女子は三人。  わたしだけ学籍番号が離れてしまい、小さな身体を更に小さく丸めて過ごしていた。 「こんにちは、櫻井さん。◯◯の課題、やりましたか?」 「し、白戸(しらと)くん。こ、こんにちは。ま、まだやっていません」  おめでとうくんは、白戸翔平(しらとしょうへい)くん。  春の日差しみたいな温かい声で笑う彼は、皆の人気者だ。  一年経っても顔を見られないわたしに、自分から話しかけてくれるひと。  他の男子みたいに、わたしを好奇の目で見ない、ただ一人の、ひと。  あの日貰った桜の花弁(はなびら)を、今でも大事に大切に持っているだなんて。  彼が知ったら──どう、思うのだろう。
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