大学二年・夏

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「俺もまだ終わっていないんです。良かったら、一緒にやりませんか?」 「は、はい。と、図書館でやりましょう」  図書館の自習スペースならば、向かい合わせの机でもパーテーションがある。  わたしの顔が、どれだけ変な顔をしても。  わたしの体が、どれだけ赤くなっていても。  パーテーションが、全て隠してくれるから。 「櫻井さん。今の時間だと、図書館の自習スペースは満員だと思います。クーラーもありますし、食堂でやりませんか?」 「え、え、えっと」  食堂は困る。  白戸くんと、顔を付き合わせる形になる。  返事に詰まったわたしは、足元に目を落とす。  場が静まり返ったのも(つか)()。  黒色のランニングシューズが近づいてきて。  教科書で顔半分を隠した白戸くんが、わたしの正面でしゃがみこんだ。
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