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異変
新緑が目に眩しい夏の、ある午後だった。
山の向こう側に、にょきにょきっと、ものの数分で積乱雲が出来上がった。
嵐の前触れか、少しひんやりとする風が、お社を吹き抜けていった。
「うっひょ~!!久々に心が踊る。一体何が起こることやら!」
「黙れ。何か大変なことが起きなければ良いが…」
案ずる左をよそに、右は全身の毛をぴりぴりと逆立てながら、お社の周りをくるくると回り始めた。
旋風が葉っぱを飲み込んだ次の瞬間、目の前がこれでもかというほど真っ白なものに包み込まれた。そのすぐあとに、地面と空間を引き裂くような轟が皆を吹き飛ばした。
右は両足をあげて、顔面を土に埋め固まっていた。左は暫く俯いていたが、思い直して狛犬の方を見た。
「これは…ただの雷ではないぞ」
左は頷いた。
右近を見ると、彼はばつが悪そうにひらりと立ち上がり顔の泥を拭って、こう言った。
「すぐ近くに落ちてきたな」
二人は宇迦之御魂神様に、外出許可を申し立てた。
「お鳴り様ご落来の故、お迎えに行って参ります」
……
「良い」
……
外出届けが受理されたので、迅速に現場に向かった。
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