はじめての夏祭り!

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はじめての夏祭り!

 夏の真ん中、夕暮れの中、ぼくは祭りの屋台を見上げていた。 「この前読んだ絵本と一緒だ。」  抜け道からお化けの夜市には行けなかったけれど、今日ぼくは確かに自分を物語の主人公だと思った。人々の汗や笑顔は弾け、きらめき、少し歩けば欲しいもの、食べたいものが新たに出てくる。老若男女みんながいつもより幸せそうに見えるこの空間が、両手をつながれたぼくには永遠の価値があるように思えた。たくましい男が、麗しい女が歩いていく。ぼくは神輿を担いでいる人に負けないくらい声を出した。ただ合わせて声を出すだけなのになんて楽しい気分なんだと思った。しかし、町のお祭りは割と早々に終わる。20:00にはアナウンスが流れはじめ、ぼくは駄々をこねてこの場にとどまったが、21:00には活気もなくなり、寂しい気持ちで帰路についた。冷えた車内で揺られながら、ぼくはなんで夏祭りを終わらせてしまうのかを考えた。みんな幸せそうだし、実際すごく楽しかった。そりゃ毎日やってたら疲れちゃうだろうけど、決まった時間で終わり!なんて言わなければいいのに。きっとみんなそう思っているはずだ。そう思った。お父さんとお母さんは、屋台を生業にするのは大変だろうとか、普通の生活があるからこそ輝いて見えるのよ、だとか言っていたけど全然納得できなかった。2人とも初めから否定的なのだ。やる方向で考えて、起きるかもしれない問題の解決を目指せばいいじゃないか。ぼくは少し憤った。しかしはじめてのお祭りで、いっぱい笑ったし、歩いたし、食べたし、そこに怒るパワーも使ってしまったら活動限界だ。お父さんの優しい運転も相まって、ぼくはそのうち眠ってしまった。
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